第17章 知識を得た者
勉強会も順調に進み今は昼休憩の時間。お昼ご飯を食べ終わった3人、今は膨れたお腹を休めていた。
「そういや救助レースの時のアレ凄かったよな!」
『ん?あぁ翼のことかな?』
唐突に始まった他愛もない会話。言は一瞬”アレ”とは何なのかと頭で考えたが直ぐに翼の事だと理解し話を繋げた。
「そうそう!体育祭では使ってなかったから職場体験で学んだのか?」
『うん、そうだよ』
「そっか!確か職場体験先は緑谷と一緒だったよな!あっ」
爆豪にとっての地雷ワード”緑谷”を出してしまったことに切島は焦りをみせた。しかし珍しくそのワードには食い掛からず爆豪は黙ってドリンクを口にしていた。
『と言っても緑谷くんとはほぼ別行動だったけどね』
「え、じゃあその個性の使い方は誰に?」
『ホークスさんだよ』
「え?!ホークスってあのNo.3の?!しかもホークスって常闇取ってなかったけか?」
『保須市の事件に関して調べることがあったみたいで九州からこっちに…それで何やかんやあって御指導して頂くことになって今に至るって感じ』
「マジかNo.3に教えて貰うってすげぇな!」
『でもホークスさんと会うのは職場体験の時が初めてじゃないの。まぁ私は覚えてないのだけれど体育祭の最終トーナメントの試合後に体調不良で倒れた私を助けてくれたの。あ、丁度爆豪くんと戦った後だね』
「…あぁ」
「へー!やっぱ若くしてプロヒーローの上位に食い込むだけあってカッケェな!!」
『うん。本当に尊敬している』
尊敬の眼差しを瞳に映し出す言に爆豪は何とも言えぬ表情で彼女を見つめた。
(あのババア…変な誤魔化し方しやがって)
…もし体育祭の時、助けたのはホークスではなく自分だと本当の事を彼女に伝えたら一体どんな反応をするのだろうか。今彼女が映しているその眼差しは自分に向けられるのだろうか。なんて、そんな爆豪らしくも無いことを考えてしまっていた。だが彼女に伝えないでくれと言ったのは自分で今更遅いのだ。そう言い聞かせ、馳せる後悔に蓋をした。