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【ヒロアカ】folklore

第17章 知識を得た者



午前中から始まった期末テストに向けた最後の追い込みの勉強会。成績優秀な爆豪と言に勉強を教えて貰った切島はこれで期末テストも万全!…とまではいかないが赤点を回避出来る程度にはなった筈だ。そして彼は感謝の気持ちを込めて2人に深々と頭を下げた。


「マジで助かったぜ!!ありがとうな!」

「もう二度とやらねぇ」

『力になれたなら良かったよ』


爆豪の厳しい言葉と言の優しい言葉。飴と鞭を同時にくらった切島は片目から涙を流し、もう片方の目は弧を描いた。


「じゃあ気をつけて帰れよー!」


会計を済ませてファミレスを出ると切島はハツラツと2人に手を振って帰路に就いた。そして残された爆豪と言。言も切島と同様に別れを告げて自宅に向かおうとしたのだが、そこに爆豪が待ったをかける。


「1人じゃ危なっかしいから送る」

『そう?…でも少し暗くなってきたからそうしてくれると嬉しい』


言は爆豪の誘いに嬉しそうに微笑んだ。そして街灯が照らす道を暫く歩くと言の自宅の近くに着く。しかし自宅の近くと言っても2人の目の前に聳え立っている長い塀は言の家の塀である。果てしなく続く塀を目でなぞっていくとかなり離れた場所に立派な門が見えた。きっとあれが正門なのだろう。爆豪は八百万家の膨大な敷地の広さに目を丸くし開いた口が塞がらない状態になっていた。爆豪の家もそこそこ広い家ではあったが、その家がちっぽけに見えるほど彼女の家は大きかった。


「…マジで金持ちだったんだな」

『え、疑ってたの』


言は心外そうに眉を下げて爆豪を見つめた。


『まぁいいや。送ってくれてありがとうね』

「どうせ1人にすると面倒事に巻き込まれるから仕方なくだわ」

『……爆豪くん』


言がお礼を言うと爆豪からは素直じゃない返事が帰ってくる。こんなやり取りも大分慣れたものだ。そして別れ道で爆豪の背中に落ち着いた声が響く。


『負けないでね』

「は??」

「何にだよ」

『まぁ、色々』

「…意味わかんねぇ」


そんな言の脈絡のない言葉に眉を寄せて爆豪は帰って行った。
皆、期末テストを無事に終えるためにラストスパートをかけて机にかじりつく。
そして忙しない夏が訪れるまであと僅か────
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