第17章 知識を得た者
午後の授業。1年A組の教室を覗いてみると切島は勉強に身が入らないのか右手にペンを持ちながらもノートの一点を見つめ、別の事に集中していた。どうやら昼休みに上鳴たちに語った言との関係の話について思い出している様だった。
───…あまり思い出さないようにしていた言との昔の関係。念願の雄英に合格して束の間、入学の日にまさか言にまた出会う事が出来るなんて思ってもおらず、あの時は一瞬涙腺が緩んでしまいそうになった。しかし言は俺の事を覚えてはいなかった。入学の日にクラスで言葉を交わした時の反応からまさかとは思っていたが本当に忘れられているとは考えもせず、悲しさであの時は今にも心が潰れてしまいそうだった。俺は言にとって数年も顔をあわせなければ忘れてしまわれるような…そんなちっぽけな存在だったのかって…。でも、もう一度出会えた。その事実がたまらなく嬉しくて俺は前を向けた。
〘 鋭ちゃん!!〙
笑顔で俺の名前を呼ぶ言…あの頃はあいつが可愛くて可愛くて仕方がなかった、何があっても俺の後を着いてきて鋭ちゃん、鋭ちゃんって。
…本当に突然の事だった言のことが好きなのに結局想いを伝えることが出来ずに言は俺の前から姿を消した。
だから今度こそあいつに想いを伝えて。
伝えて……いや想いを伝えるのはまだだろ…。
俺は”守れるヒーロー”ならなくちゃいけないんだ。そんなヒーローになれた時、言に想いを伝えよう。
そして今度こそ…後悔のねえ生き方を…!