第17章 知識を得た者
授業後、私と緑谷くんはオールマイト先生に呼ばれたとおり仮眠室前にいた。いつもの秘密を話す場所だ。
「じ、じゃあ…ノックするね」
『うん』
緑谷くんが緊張混じりに仮眠室の扉をノックして部屋の中にへと入る。
「掛けたまえ」
いつもと違う雰囲気が立ち篭める部屋に私たちは唾を飲む。何だかオールマイト先生の声も重みのある声をしている。
「いろいろ大変だったな。近くにいてやれず、すまなかった」
そして私たちが椅子に腰かける前にオールマイト先生は突然謝罪の言葉を口にする。
「そんな…オールマイトが謝ることでは…」
『そうですよ…!』
「それより…あの…ワン・フォー・オールの話って…」
椅子を引きながら私と緑谷くんはオールマイト先生の謝罪に否定を示し、緑谷くんが椅子に腰おろした所で本題に入ろうとする。
「君、ヒーロー殺しに血を舐められたと聞いたよ」
「あ、はい血を取り入れて体の自由を奪う個性で……それが何か…」
「力を渡した時に言ったこと覚えているかい?」
「食え…」
緑谷くんはその時のオールマイト先生のマネなのか、中々にクオリティの高い顔マネをしてそう言った。
「違う、そこじゃない 」
オールマイト先生は緑谷くんに個性を渡す時にそんなことを言ったのかと情景を思い浮かべると何とも言えない気持ちになった。でもそうか、DNAを取り入れて個性を渡せると言うのならば…私は最悪の予想を頭に想像する。
「DNAを取り込められるなら何でも良い…と言ったはずだ」
「え…じゃあまさか…ヒーロー殺しにワン・フォー・オールが………!?」
「いやないよ、君ならそれを憂慮してるかと思ったが…そう…忘れてたのね」
そしてオールマイト先生から個性譲渡のやり方の話を思い出した緑谷くんは私と同じように最悪の事態を予想する。が、DNAを取り入れるだけでは譲渡は成り立たず、個性の所有者が渡したいと思った相手にしか渡せないとオールマイト先生はワン・フォー・オールの譲渡方法を青春漫画のようなイメージで説明してくれた。
「特別な個性なのさ…そう、その成り立ちもねワン・フォー・オールは”元々ある1つの個性”から派生したものだ」