第17章 知識を得た者
全組の救助訓練レースが終了し、私たちはコスチュームから制服に着替えるべく、女子更衣室に居た。
「それにしても言ちゃん凄かったね!翼生やして飛んで!!」
目を輝かせながらお茶子ちゃんが興奮気味に翼について話すので、照れくささも感じながら口を開く。
『ありがとう、職場体験で学んだの』
「いやー!あれには勝てないわ!」
救助訓練の話をしながらも着替えを続け、コスチュームを全て脱ぎ終わった時に隣の部屋から峰田くんの声が聞こえてくる。
「おい緑谷!!やべェ事が発覚した!!こっちゃ来い!!」
『…?峰田くんの声だ』
「なんかあったのかなぁー?」
峰田くんの興奮しきった声色に何事かと私たちはそっと聞き耳を立てた。
「見ろよこの穴ショーシャンク!恐らく諸先輩方が頑張ったんだろう!!隣はそうさ!わかるだろい!?女子更衣室!!」
彼の言葉に女子更衣室全体の空気が凍りつく。みんな表情が穏やかではなく、私たちは隣の男子更衣室にいる峰田くんを睨みつけるように壁を見つめた。
『破廉恥な…』
「響香ちゃん!!」
「まかせて」
そう言って響香ちゃんは峰田くんが覗いてくるであろう穴を見つけだし、イヤホンジャックを構えて目潰しをする体勢にはいる。
「八百万のヤオヨロッパイ!!芦戸の腰つき!!葉隠の浮かぶ下着!!言の白くなめらかな美脚!!麗日のうららかボディに蛙吹の意外おっぱァアアア!!」
峰田くんは今から自分の身に起こる悲劇など知る由もなく、息を荒くしながら頭を抱えるほどに痛くなる言葉をツラツラと述べて女子更衣室へと繋がる穴を覗いた。まぁ自業自得な行為をしているので悲劇と言うのもまた違うような気もするが…
「あああ!!!!」
そして峰田くんが私たちの姿を視界に入れる前に、彼の目に響香ちゃんのイヤホンジャックが刺さり峰田くんはダメージを受ける。
「耳郎さんのイヤホンジャック…正確さと不意打ちの凶悪コンボが強み!!」
(緑谷くん…こんな時でも個性分析…)
私は緑谷くんのいつも通りの対応に峰田くんの悪しき行動を忘れ、苦笑いを浮かべた。
「ありがと響香ちゃん!」
「何て卑劣…!!すぐにふさいでしまいましょう!!」
(ウチだけ何も言われてなかったな…)