第17章 知識を得た者
オールマイトの合図で一斉にスタートする。1番早くスタートしたのはテープを建物に巻きつけて上を飛んでいった瀬呂。
「ホラ見ろ!!こんなごちゃついたとこは上行くのが定石!」
「となると対空性能の高い瀬呂が有利か」
見学側サイドでは瀬呂が1位と予想した切島が得意げに瀬呂の動きを褒めたてる。そしてその言葉を聞いた障子は納得をするように頷いた。
「ちょーと今回俺にうってつけ過ぎ…る…?」
建物から建物にへと移動する瀬呂は自分の個性に有利な状況に綻びを見せる。が、その隙をつくように言と緑谷が瀬呂を軽々と抜き去る。
「うってつけ過ぎる!修業に!」
『ほんとにっ…ね!』
緑谷は個性の能力を5%に維持しながら建物を踏み台に跳び跳ね、言は翼を背中に生やして大きく羽ばたいた。ちなみにこの能力を使うことのデメリットの1つであったコスチュームの破損はホークスにコスチュームの詳細を受け取った後、ルーシーがコスチューム会社に宛があると言うので彼女に任せてみると何と翌日には完璧に調整されたコスチュームが届いていたのだ。今彼女が身につけているコスチュームは職場体験時からさらに改良されたNewコスチュームという事だ。特殊な繊維で作られたコスチュームは翼など言が個性を使っても影響を与えない仕様になっている。あんな短期間でこのクオリティの服を作れるのは相当腕の経つ会社が担当したのだろう。
「「ぉぉぉぉ緑谷?!言!!?」」
峰田と上鳴が声を合わせて予想外の先頭ランナーに驚きを見せる。
「何だその動きィ!!?」
「何で翼生えてんだァ?!!」
ほぼ全員が予想し得なかった順位に見学組は目を丸くした。
「すごい…!緑谷くん!ピョンピョン…何かまるで…」
そう建物から建物へと飛び移る身軽な緑谷の動きはまるで爆豪のようだった。
(俺の動き!!俺が職場体験で馬鹿みてえな時間過ごしている間にまた…また…!!!)
モニターに映る緑谷を見て爆豪は手を強く握りしめながら、歯を強く食いしばり悔しさや焦燥を募らせた。
「アレは…」
また、言の飛ぶ姿を見て常闇が眉をひそめた。
「1週間で変化ありすぎ…」