第16章 知識を得る者
夕日が差す時間まで空の旅を楽しんだ言とホークス。長時間飛んでも問題ないことを確認し終えた2人は図書館にへと戻り、ホークスは九州にへと帰る準備をしていた。
「はい、コレ俺の連絡先。後でコスチュームのデザインとか送っておくね」
『ありがとうございます』
ホークスの連絡先が書かれたメモ用紙を受け取り言はお礼を告げる。しかし、メモを受け取った言は少し寂しそうでホークスはそんな彼女の姿を見て嬉しさを募らせる。
「言ちゃん」
『はい?』
「また、会いに来てもいいかな。今度はヒーローとしてじゃなく。プライベートの俺として」
『でも、ホークスさんはお忙しいんじゃ…』
「俺がそうしたいんだ。また君に会いたい。君と空を飛びたい。君の笑顔が見たいんだ」
まるで告白でもしているかのような言葉選び。でもきっと言は鈍いところがあるからこの言葉も友好の証として捉えるのであろうとホークスは考えていた。別に彼女にその意図が伝わらなくても構わなかった。ただ自分が伝えたかったのだ。向かい合う2人の間には数秒の沈黙が流れる。ホークスは静かに目を閉じて彼女の返答を待った。
『それは…デート、のお誘いとして受け取ってもいいのでしょうか』
「え!?」
ホークスは思っていた返答と違う言葉が彼女から返ってきて、予想外の出来事に声を上げて驚く。
『…っ違いますよね!!ごめんなさい!自惚れました!』
驚いたホークスの反応を見て自分の勘違いだったのだと恥ずかしさに顔を俯かせる言。ホークスは口角を緩ませながら彼女の顔にそっと手を当て、顔をあげさせる。
(普段は鈍いくせに、こういう言葉には敏感なのか)
「いや、間違ってないよ。でもこれ以上先の言葉はまだ言わない。俺はまだ君の中ではいい大人でいたいからね」
今にもとろけてしまいそうな音色でそう囁かれ、言は自身の熱が高まっていくのをひしひしと感じた。そして優しく言の頬を撫でたホークスは真剣な表情を崩して二パッと微笑み、最後に言の頭を触って図書館を後にした。
「じゃあまたね」
『はい…またいつか…』
ホークスの背中を見送った言はその場でヘタリ込み一言呟いた。
『大人ってスゴい……』