第16章 知識を得る者
「んん゛っ!とりあえずコスチュームの件に関しては俺のコスチュームを参考にしてもらって…問題は長時間使用する場合だね」
お互いの間に漂う、何とも言えぬ空気を払うかのように咳払いをしたホークスは話の話題を元に戻す。まぁ話の流れをズラしたのはホークス自身であったが。
『一応色々な参考書等を呼んで構造の理解はしたのですが現物がないとやはり難しくて。なので、えと、翼の方…触らせて頂いてもいいですか…?』
「…いいよ〜!」
ホークスは言に何か言いたげな表情を向けたが、その言葉を飲み込み彼女に背を向けて翼を見せてあげた。
「なるほどここの部分はこのようになっていて、ここはこう……」
翼を言に向けた瞬間に彼女は目の色を変えてどこからかメモ帳を取り出し、遠慮なく翼を触ってくる。また近くで見たり、遠巻きで見たりとすっかり自分の世界に入り、食い入るように翼を観察した。長いこと一緒にいたせいなのか独り言をブツブツと呟きながらデータをまとめる様はまるで緑谷のようだった。
そして観察されている側のホークスは己の葛藤と戦っていた。好きな子から翼…要は体の一部を触られているという出来事はまさに役得。しかし成人済みの大人でしかもプロヒーローである自分が年下で高校生の女の子に手を出すことはあってはいけない。頭の中には様々なビジョンが映るがそのビジョンを振り払うようにホークスは首を大きく振っていい大人を演じた。
(耐えろ俺の理性っ…!!)
決して長い時間ではなかったが、ホークスにとってはとても長く感じた観察の時間が終わった。何とか自分の理性との戦いに耐えきったホークスは息を切らしながらも平然を装って話を切り出す。
「もう大丈夫かな?」
『はい、このデータを用いれば長時間飛行することも可能だと思います。本当にありがとうございます』
言はメモ帳を胸の前に当てながら嬉しそうに微笑んでお礼を言った。
「じゃあ次は実際に長い時間飛んでみようか」
『はい!』