第16章 知識を得る者
保須市で起きたヒーロー殺しの事件も落ち着き、職場体験5日目。今日は最初からヒーローコスチューム着用での開始らしい。そして言は既に疲れているのか図書館前の扉に手を付いて息を整えていた。実はルーシーの命令でグラントリノの家からヒーローコスチュームに身を包んできたので、この図書館に来るまでに沢山の人に視線を送られたのだ。それ故、慣れない視線にむず痒くもあったがこれから先はこのような事が当たり前になるので慣れなくては!と言う事で自分に言い聞かせて気を引き締め直していたのだ。
『おはようございます』
気持ちを入れ替えた言が図書館の扉を開けるとルーシーからの返事はなく。耳を澄ますと奥の部屋で誰かと会話をしているようだった。
「ルーシーさん。急に呼び出して何ですか?まぁヒーロー殺しやら敵連合絡みで元々保須市に用があったので好都合ですが」
ルーシーと会話をしていたのは福岡を拠点として九州等で活躍するプロヒーローのホークスだった。髪は輝度の高い黄土色。そして髪色に合わせたジャケットと黒のインナーに手袋。目にはゴーグルをかけ、背中から生えた大きな翼の羽根の色は紅。 ヒーロー活動をしている普段の彼の姿だった。
「今日はアンタに”ウチのコ”を見て欲しんだよ」
「ウチのコ…?あー…雄英高校の!でも俺、既に雄英の生徒取ってるんで間に合ってるんですよね」
「こんな場所まで来てその生徒を放ったらかしにしているのにかい?まず、アンタ。私の頼みを断れる立場かい?」
「うっ…って言うかルーシーさんヒーロー免許持ってましたっけ??まずルーシーさんが指名する子って相当…」
『あっ、あの…!』
意図的ではないが何かを詮索しようとするホークスの言葉を遮るように言が声をかけた。
『お話の途中にごめんなさい。お声をかけても気がついていなかったようなので…』
「ああ、すまないね。隣にいるのはプロヒーローのホークスだ。流石のアンタも知っているだろ?」
『ホークスさんですか!あの、私雄英高校1年A組の八百万言と申します。体育祭の時は本当にありがとうございました。いつか直接お礼を伝えたくて…でもこんな所で出会えるなんて凄く嬉しいです!』
「て………い……」
『ホークスさん…?』
「天使たい……」