第16章 知識を得る者
「なんか…わりィ…」
真面目な雰囲気の中で突然、轟くんが飯田くんと緑谷くんに謝罪する。
「何が…」
緑谷くんは轟くんの謝罪の理由が理解出来ず、何に対して謝ったのかを問いかける。
「俺が関わると手がダメになるみてぇな…感じに……なってる……呪いか…?」
冷や汗をかきながら轟くんは深刻そうな顔を浮かべ、自分の右手を見つめてそう言った。
『…へ?』
「あっははは!何を言っているんだ!」
『轟くんも冗談言ったりするんだね』
私達はぽかーんと口を開け、飯田くんと緑谷くんは轟くんなりの冗談だと受け取り大きな声で笑う。
「いや、冗談じゃねぇ。ハンドクラッシャー的存在に……」
「「ハンドクラッシャーー!!」」
飯田くんと緑谷くんは轟くんのハンドクラッシャー発言に耐えられなかったのか笑い吹き出した。私も声は出さずともじわじわと笑いの沸点が近づいているので、手で口を押え、肩を揺らしながら笑いを我慢していた。これ以上轟くんが何か天然な事を言うと笑いを我慢できなさそうなので、彼に対して目で何も言わないでと訴えるが天然な彼に伝わる訳もなく。轟くんは私の目を見て真剣な表情で口を開く。
「言おまえも気をつけろよ…!」
『フッ…ふふっ。もう、無理…!轟くん、どこか抜けてるとは思ってたけどここまでとは…!あはは!』
「おい、おまえら…!笑うなよ。こっちは真面目に…!」
その後、私たちは轟くんの真面目なハンドクラッシャー発言に数分笑い続けた。意図せずとも轟くんの天然な発言のお陰で病室からは重苦しい雰囲気が無くなり私達はお互いに距離を縮めることができた。