第16章 知識を得る者
細い路地裏から現れたエンデヴァーはひとカタマリになって動かない彼らの様子を見て怒りの声を上げた。
「そっちに1人逃げたハズだが!!?」
「エンデヴァーさん!!あちらはもう?!」
「多少手荒になってしまったがな!して…その男はまさかの…」
目の前に映る光景。それはエンデヴァーが逃がした脳無を倒したステインだった。そして彼の足元には無傷の言の姿。そんな様子に片目を細めこの不可解な状況を把握しようとする。
「エンデヴァー…」
「ヒーロー殺し!!」
「待て、轟!!」
ステインはエンデヴァーを視界に入れるとその場でフラフラとしながら立ち上がる。その反動で彼の目元を覆っていたマスクが剥がれた。グラントリノはステインの唯ならぬ気配を察知してエンデヴァーが攻撃しようとするのを抑止した。
そして全員がステインを目にした時、そこには背筋が凍るほどに目を見開き皺を寄せ憎悪と怒りに満ちた顔をしたステインが立っていた。
「贋物…正さねば────…誰かが…血に染まらねば…!!」
ステインはゆっくりと足を前に出す。
「”英雄”を取り戻さねば!!」
この場の全員がステインの圧に立ち竦みあのエンデヴァーでさえも尻込みをする。
「来い、来てみろ贋物ども…」
先程とは逆の足をゆっくりと前に出す。
「俺を殺していいのはオールマイトだけだ!!」
その場で後ずさる者。尻もちをつく者。言葉を発することが出来ずに唯息を荒らげる者。ここにいる全員がステインのその姿に圧倒された…そしてまた前へと足を動かすステイン。その時、誰もが予想しなかった出来事が起きる。
『もう駄目です…!これ以上は!』
言が地面に倒れながらもステインの腕を強く掴み大きな声でそう言った。そんな彼女の行動にその場の誰もが息を止め、”彼女が殺される”。そのビジョンが脳裏を掠めた。しかしそんな考えははずれ、ステインはただ前を向いてその場から一歩も動かなくなった。そしてステインが動かなくなった事に気がついたエンデヴァーはゆっくりと口を開いた。
「………気を…失ってる…」