第16章 知識を得る者
緑谷達と合流。ヒーロー殺しを捕え全ての事が終わったかと思ったその時、どこからか羽を羽ばたかせる音が聞こえてくる。その音にいち早く気がついたグラントリノが後ろを振り向き言達に「伏せろ!」と大きな声で注意を促した。すると脳無が空から現れ人塊になっていた言達目がけ急降下して来る。
「ヴィラン!エンデヴァーさんは何を…!」
脳無は片目を損傷していてエンデヴァーから一目散に逃げてきたように思われた。そしてその脳無は何故か緑谷を捕らえようとしている。その行動に気がついた言が緑谷を押し退け彼の代わりに身体を捕まれ連れ攫われてしまう。
「そんなっ、言さん!!」
「言くん!!」
「やられて逃げてきたのか!」
ギチギチと体に巻き付く脳無の足。言は痛みに耐えながらもどうにかして脳無から離れようと個性を使おうとした。
『【ショートカット】…!』
しかし──────────
「偽物が蔓延るこの社会も…」
先程まで気を失っていたはずのステインの声が微かに聞こえてきた。すると上空を飛んでいた脳無の動きが止まり脳無と共に言は地面にへと落下していく。
「徒に”力”を振りまく犯罪者も」
落下する脳無の上にステインが現れ、脳無の頭を武器で的確に貫いた。そして言が地面に落ちる瞬間、ステインはどういう訳か彼女を片腕で抱える。まるで彼女を助けた様子だった。
「粛清対象だ…ハァ…ハァ…全ては正しき社会の為に」
(また、助けてくれた…?)
ゆっくりと地面に体を降ろされながら頭の中でそう考える言。そんなステインを見てヒーロー達は驚き一瞬その場に立ち尽くしてしまった。
「助けた…?!」
「バカ、人質取ったんだ躊躇なく人殺しやがったぜ」
「いいから、戦闘態勢とれ!とりあえず!」
訳の分からない状況に頭が追いつかず冷静さを失うプロヒーロー。そんな時、エンデヴァーが現れた。
「何故ひとカタマリでつっ立てっている!?」