第16章 知識を得る者
翼を消去し、言が緑谷にお説教をしていると後ろにいた轟が口を開いた。
「お前って怒ると案外怖いんだな」
『え、あれ轟くんと飯田くん?!』
余程緑谷を心配していたのか言の視界には轟と飯田の姿が入っていなかったようだ。そんな彼女の様子を見て飯田は言が大層緑谷を心配していたんだなと思い苦笑した。
『あれ…?轟くんの後ろ…』
「あぁ…ヒーロー殺しだ。さっき捕まえた」
『え、ヒーロー殺し…?』
「あぁ…緑谷を担いでるあのプロヒーローが襲われているところに飯田と緑谷がな。俺は助っ人にきただけだ」
『でもこの人…』
そう轟が引きずっていた人物は紛れもなくヒーロー殺し、ステインだった。またこの間の夜、言を助けてくれた人物でもある。そんな今の状況に頭が追いつかない言は詳しい事を轟に聞こうとした瞬間
「細道…ここか?!……あれ?」
路地裏からプロヒーローが数人駆けつけた。ヒーロー達は目の前の異様な光景に、何があったんだとでも言わんばかりの顔を浮かべた。
「あいつ……エンデヴァーがいないのはまだ向こうは交戦中ということですか?」
「ああ、そうだ脳無の兄弟が…!!」
「ああ!あのヴィランに有効でないやつらがこっちの応援に来たんだ」
プロヒーロー達と情報を交える緑谷達。そんな彼らの一歩後ろで飯田は静かに頭を下げた。
「……………2人とも……僕のせいで傷を負わせた、本当に済まなかった…何も…見えなく…なってしまっていた……!」
飯田は緑谷と轟に深く頭を下げ、弱々しい声で目に涙を溜めながら謝罪した。
『飯田くん…』
「………僕もごめんね、君があそこまで思いつめてたのに全然見えてなかったんだ友だちなのに……」
「しっかりしてくれよ、委員長だろ」
「……うん…」
そう頷いて飯田は自身の腕で涙を拭った。