第16章 知識を得る者
(何が起きたの…??)
視界を遮っているのは人の手だ。しかも片手で言の顔の殆どが覆われてしまうほどに大きい手。また、目が見えないと感覚も鈍る。そんな状態の彼女が体に違和感を感じると、少しして自身の体が浮いていることに気が付く。すると目を塞いでいた手が言から離れたのか目の前には少し曇がかかった空とイルミネーションのように光輝く街があった。
『え、ええ?!!』
言は見ず知らずの男に抱えられビルの屋上を軽々と飛び越えていた。そんな突然の出来事に大きな声を上げながらも自分を抱いている人物を見上げた言。その人物は鋭利な顎が特徴で包帯状のマスクを顔に身に着け、かなり擦り切れた赤のマフラーと無造作な黒髪を纏めるバンダナ。体には頑丈そうなプロテクターを着用していた。そして背中には護身用なのか日本刀と数本のサバイバルナイフを背負うように所持。マスクで隠れた目元は濃い影のようなっていてその奥からは充血した赤い瞳を覗かせていた。
「本当に…ロクでもねェ輩もいるもんだ。こんなガキに手出そうとするなんてな」
そう呟きながらビルの屋上でゆっくりと言を地に降ろす。そして何も言わずに立ち去ろうとする男を言は大きな声で引き止めた。
『まっ、待ってください!!』
「あ?」
『助けて下さり本当にありがとうございました!』
綺麗に頭を下げる言の姿を見て男は不満げに目を細めた。
「別にお前を助ける為にやったんじゃない。俺は粛清しただけだ、あの腐った男をな」
『それでも助けて貰ったのに変わりありません!』
そんな言の曇りなき眼で見つめられた男は拍子抜けしたように肩の力を抜いた。
「そうか」
『お礼をさせて下さい!!』
男は言の発言に赤い瞳を開いた。
───なんだこの女…この俺を”ヒーロー殺しステイン”と知ってそんな事言ってんのか?それとも俺に気づいての何かの罠か?いや、それならこんな反応はしないだろ…言葉遣いや立ち振る舞いからして上級貴族のお嬢様ってところか。確かに世間知らずな顔をしている。それにこの制服は雄英高校の…まぁ丁度いい…
「…なら俺の質問に答えろ」