第15章 職場体験開始
一日目は緑谷とグラントリノの戦いを見守り図書館に足を向けただけの言。そして二日目の朝、たい焼きからという独特の思いつきではあったが緑谷は常時身体許容上限を超えないように個性を扱うことに成功した。そんな緑谷を見て言は焦りを感じていた。彼はこの職場体験から色々な事を得て成長しているのに自分はまだ何もしていないという焦りだ。
(私は…これ以上遅れをとるわけには…!)
そして朝食後、言はそんな焦りを抱えながら出掛ける準備をして昨日訪れた図書館にへと来た。
「今日俺は中に入らんからな。あの小僧を見なきゃいけねえ。道はもう覚えたから大丈夫だよな?」
『はい大丈夫です、わざわざ送って頂きありがとうございます』
「おう」
そう返事をして来た道を戻って行くグラントリノ。彼の背中を見送りながら言は図書館の扉の前で一度は大きく深呼吸をして息を整える。
『今日こそ会えるかな…』
そんな不安を胸に抱きながら言は図書館の扉を開けた。
「おや、来たね」
扉を開けるとそこには司書のルーシーがいた。まるで彼女は言が今日ここに来るのを分かっていたのか、それ程に絶妙なタイミングで扉を開けようとしていた。
『わ、おはようございます!昨日もお伺いした八百万言です』
「知ってるよ……お嬢ちゃんついといで」
言は扉の目の前に立っていたルーシーに驚き一瞬声を上げるが、直ぐに彼女に挨拶をする。そんな言を見てルーシーは指にはめた鍵をチラつかせながらそう言った。