第15章 職場体験開始
言の自己紹介が終わると同時に図書館にはお客さんが入ってくる。
「御免ください…と、珍しい…学生さんかい」
『こんにちは』
「こんにちは。ルーシーさんよろしいですか?」
言がお客さんに綺麗に会釈をしてするとお客さんも優しく笑い、会釈を返してくれた。どうやらこの図書館の常連のようだ。
「あいよ」
(ルーシーさんって言うんだ…)
「このリストの本を一通り借りたいのだが…」
常連の人がルーシーに紙を渡すと数秒彼女は紙を見つめて黙り込んだ。そして─────
「ふ-34-970-る・り-7-201-そ─────…」
ルーシーは突然暗号と思われるほどの言葉をつらつらと口にする。そして常連の人は慣れた手つきで彼女が口にした番号をメモに取り始めた。どうやらリストの本が置かれている場所を口頭で常連の人に伝えているようだ。
「おしまい」
「助かった。ではまた」
あまりのスピードに呆気を取られる言。そしていつの間にか言い終えたのか常連の人はルーシーにお礼を言って図書館を去って行った。
『本の場所全部覚えてるんですか?PCで検索とかせず…』
「そうだよ、おかしかないだろ。毎日場所がシャッフルされるわけじゃない。その日入ってきたものを覚えるただそれだけを何十年かやれば出来上がりだ。簡単だろ?」
『いや…簡単って…』
言はルーシーの言葉に唖然とする。
───自分もそこそこ記憶力はいい方だけどこの図書館の無数にある本の場所を覚えるなんて考えるだけで頭が痛くなる…。
「言、おまえは少しあっちで待っててくれ」
『あ、はい!わかりました』
言はグラントリノの指示通り椅子が置いてある場所で待つ事にした。