第15章 職場体験開始
言とグラントリノが建物の外に出た後、二人は建物の入口の扉から緑谷の様子をこっそりと見ていた。彼は何か閃いたのかブツブツと独り言を呟いて先程グラントリノに言われた事をノートに一心不乱に書きなぐっている。
「俊典…オールマイトはなかなか良い奴見つけたようだな」
緑谷を見て笑みを零すグラントリノ。そんな彼に言は目を細めふわりと笑い自信満々に緑谷について話す。
『はい、緑谷くん立派なヒーローになりますよ』
「ほぉ、随分と自信ありげに言うじゃねぇか」
『ん~…女の勘です!』
「ハッハッ!そうかい!」
少し間を置いて悩む素振りを見せた言はパッと笑顔を見せてグラントリノにそう告げた。そんな言の言葉に腹から大きな声を出して豪快に笑うグラントリノ。そして言達は目的の場所へと足を動かした。
『そういえば、グラントリノさんが私を指名したのは紹介したい人がいるからって…』
閑静な住宅街を歩きながら質問をする言。
「あぁそうだ、でも紹介してぇ奴にはお前のことをまだ話してねえ」
『え、そうなんですか…』
「まっ、大丈夫だろ!!」
言はケタケタと笑うグラントリノを見つめながら心配そうに眉を寄せた。すると目的地に着いたのかグラントリノが足を止める。
「さっ、着いたぞ」
『ここが…』
そう言ってグラントリノが指さした先には周りに建っている住宅の何倍もあるであろう大きな洋風の建物が聳え立っていた。まるでその建物の場所だけが外国にトリップしたかのように。そう言えるぐらいにこの建物は周りの景観といい意味で合っていなかったのだ。
「紹介してえ奴はこの中にいる。入るぞ」
ギィと古びた音をたてながら開く扉。そしてグラントリノは良くここに訪れるのかスタスタと慣れているように先へ進んでいく。