第15章 職場体験開始
「いやぁあ切ってないソーセージにケチャップぶっかけたやつを運んでたらコケたァ〜!誰だ君は!?」
先程の床に流れていた液体は血ではなくケチャップだったようだ。そして床に倒れていた老人は杖を付きながら足取り悪くヨボヨボと立ち上がる。
「雄英から来た緑谷出久です!」
「何て?」
老人は耳が悪いのか緑谷に聞き返す。そして緑谷はもう一度大きな声で名前を名乗った。
「緑谷出久です!!」
「誰だ君は!!」
しかし緑谷の言葉は老人の耳には入っていないようだった。
「飯が食いたい」
「飯が!!」
老人はそう言って床に零れたケチャップの上に勢いよくお尻から座り込んでしまう。
『あぁ、ケチャップが付いちゃった…』
言はそんな老人の姿を見てすかさずカバンからハンカチを取り出し汚れた場所を拭こうとする。
「俊典!!」
「違います!!す…すみませんちょっと…電話してきますね」
そんな言の横では未だに緑谷と老人の掛け合いが続いていた。一向に話が進まない緑谷が痺れを切らして一度外に出ようと老人に背を向けた瞬間
「撃ってきなさいよ!ワン・フォー・オール!”どの程度扱えるのか”知っときたい!」
老人はいつの間にか床から立ち上がり緑谷のヒーローコスチュームが入っているケースを開けて中を拝見していた。
「や…えと…そんなことし…」
「良いコスじゃんホレ着てうて!誰だ君は?!」
「うわあ!!っ〜〜…僕…早く…早く力を扱えるようにならなきゃいけないんです…!オールマイトには…もう時間が残されてないから…」
『あ、待って緑谷くん…!』
緑谷は苦い顔をしてそう言い捨て言と老人に背を向ける。
「だから…こん……おじいさんに付き合っていられる時間はないんです!」
そう言って緑谷が建物の外に出ようとした瞬間。先程までケースの中身を覗いていたはずの老人が目にも止まらぬスピードで緑谷の前に移動し、不敵な笑みを浮かべ扉の上に立ちはだかった。
「だったら尚更撃ってこいや受精卵小僧」