第15章 職場体験開始
新幹線で45分。駅に到着して辺りを見回すとビルや家々が建ち並ぶごく普通の街だった。そんな街中を言と緑谷は体験先から頂いた地図を頼りに歩いていた。
「オールマイトですら恐れるヒーロー…”グラントリノ”聞いたことない名前だけどすごい人に違いない!」
1年という短い期間ではあるがオールマイトの担任であったという人物に見てもらえることもあって期待に胸膨らます緑谷。そんな緑谷を微笑ましく見つめながら言は地図に目を通すとどうやら目的地に着いたようだ。しかし彼らの目の前に映るの建物はそんな期待が崩れ去る程に廃れていて、周りはそんな建物の危険性を物語るように工事現場用の柵が張られていた。元はレンガ造りの建物であったのだろうがそんなレンガは一部しか残っていなかった。壁はヒビ割れ、かけているところもある。他にも窓ガラスなども無惨に割れている。
『まぁ…』
「すごい人に違い…ない…」
『ボロボロだね…』
そんな建物に顔を引き攣らせる言と緑谷。念の為、頂いた住所をもう一度よく確認するが何度住所を確認しても間違いはない。
『とりあえず入ろっか』
「う、うん…」
息を飲み、覚悟を決めた二人は建付けの悪いドアを恐る恐る開けながら建物の中に入っていく。
「雄英高校から来ましたー…緑谷出久です…よろしくお願いしま…あ」
『八百万言です。よろしくお願いし…あ』
ドアを開き建物の中に入った矢先、二人は声を合わせ目の前に映る衝撃的な光景に目が飛び出すのではないかという程見開いた。
「あ、あ、あああ死んでる!!」
緑谷が大きな声を上げて驚く。それもそのはず、彼の目の前には床に血と思われる赤い液体を流しその上に横たわる老人がいたからだ。
「生きとる!!」
しかし緑谷の言葉を聞いた老人は勢いよく顔を上げて声を発した。
「生きてる!!」