第14章 心機一転とお友達…?
───なんて事もあったっけ…
3人の男子生徒に囲まれ壁に追いやられている言は恐怖や焦りを隠すように両手を固く握りしめ心操との思い出に浸っていた。何故こんな状況になっているのか、それは昨日の心操との出来事から時間が進んで次の日の昼休み。言はいつも通り食堂で百とお昼ご飯を食べようと思っていたのだがこの普通科の男子3人組に1人でいるところを発見され、半ば無理やり校舎裏に連れられて今に至っている。
「言ちゃん中々1人にならないから大変だったよ」
「体育祭で一目惚れしちゃってさ〜」
「運命感じちゃったんだよね」
(絶対に嘘…)
ニヤニヤと薄汚い笑みを顔に張りつけた男達にあからさまに不愉快な表情を向けて言は一歩足を引く。
『私、待たせてる人いるんで…』
「あ!もしかして双子のお姉様?!」
「いいよ!いいよ!その子も呼んで一緒に食べようよ」
(何も良くないんだけど…)
『本当に時間が無いので私は失礼しまっ…!』
このままでは埒が明かないと隙を付いて男達の間から逃げようとするが両肩を掴まれ後ろに引っ張られる。そして逃げられないようにする為か二の腕を強く握られ拘束される。
『やっ…!!』
「ねぇ、何してんの」
触られた事による不快感と恐怖を覚え、声を上げると同時に何処からともなく声が聞こえてくる。聞き覚えのある低めの声は怒りや不機嫌さを募らせていて、より一層の重低音を響かせた。
「あ?見りゃ分かんだろ…っ」
「言ちゃんと今から一緒に昼食をだなぁ」
「?てか何処から声が」
受け答えした男子生徒の内1人が途端に魂を抜かれたように静かになる。しかし他の2人はその男子生徒が固まっていることに気が付かず、声の出処を探そうと辺りをキョロキョロと見渡していた。
「一緒に昼食を食べる誘いにしてはあまりに強引過ぎるだろ」
「なんだと!!」
そしてもう1人の男も言葉を交わした瞬間に目の色を無くし、まるで人形のように固まってしまった。
「な、なんなんだよ!!」
最後の1人となった男はその不気味さに、足や声を震わせて冷や汗をダラダラとかく。そして2人を捨てて一目散に逃げ行ってしまった。
「行くよ」
目の前に現れた心操はそう言って言の手を取り走り出した。