第14章 心機一転とお友達…?
心操は言に助けて貰ったお礼を言ったのだが、そのお礼を言われた当の本人は何故かじっと心操の顔を見つめて返事を返さない。心操は彼女の視線に汗をかきながら声をかけた。
「何か俺の顔についてる…?」
『心操くんって凄く言葉を大事にしているよね』
「は…」
突拍子もない言の問いかけに呆気を取られる。
『わかるよ。私も”言葉を使う個性”だから』
「何だよそれ…」
『さっきの女の子にハッキリと断らなかったのがその証拠』
少し主語が抜けているが彼女から出てくる言葉はまるで心の内が全部見られているようで少しの恐怖を覚えた。
────確かに彼女を傷つけまいと言葉を選んで話してはいた……でも今思えば、ハッキリと断らなかったから彼女に期待を持たせてしまったのか。悪い事をした…
『私と心操くんって似てると思うんだよね』
「…どこが?」
『うーん。何処だろう…でも、そう感じたんだ』
「何だそれ…大体、普通科の俺とヒーロー科のアンタ。しかも体育祭3位の優秀な奴が俺と似てるわけな…」
『口は幸せの元だよ。やっぱり私と貴方は似てる』
そう言って心操の言葉を止めるように人差し指で彼の口を塞ぎ、儚い笑みを浮かべる言。心操は突然近くなった彼女との距離に驚きと恥ずかしさで頬を赤くした。
『言葉は道具にも武器にもなる…だからこそ私は言葉を使って笑顔を作りたい。誰かの力になりたい。正しい使い方をしたい』
そして心操の口から手を離すと、言は教室の窓から空を見上げ、その空に思いを馳せる様に手をかざした。心操は彼女の話に聞き入ってしまった。言葉の重みも然ることながら1番は彼女の声だった。あまりにも綺麗で透き通った言の声はすっと耳に入り心に届く。
───彼女は、俺と似ていると言うけれどもやっぱり全然違う。俺は彼女のように誰かの心に届けられる声や言葉を持っていない。俺が出来るのは誰かの心を操る事だけ…。全然似ても似つかな…
『大丈夫、心操くんもきっとなれるよ。ヒーローに』
彼女にそう言われると…彼女がそう言うと本当になれる気がした。
いや────
「なるんだよ。いつかアンタの事も追い抜かすから。覚悟しておいた方がいいよ」
『うん。私も負けない』