第14章 心機一転とお友達…?
その後、緑谷と共にオールマイトから職場体験に関する資料などを貰うと2人は「また明日」と言葉を交わして職員室前で互いに背を向け合った。そして言は教室で待っている百を迎えに行くために廊下を歩いていると空き教室の中から声が聞こえてきた。廊下側に付けられた窓から教室を除くと男子生徒と女子生徒が向かい合っている光景が目に映った。どちらも普通科の生徒のようだが、男子生徒は見覚えのある人物で少し困った顔を浮かべながら片手を頭の後ろに当てていた。そんな彼の前に立つ女子生徒は頬を赤く染めて中々会話を切り出さない。
(告白かな?)
「体育祭の姿を見てカッコイイと思って…あの、好きです!私と付き合ってください!」
言の予想は的中し、女子生徒がスカートを握りしめながら勇気を振り絞って声を上げた。そして告白された男は頭に当てていた手を動かして困惑を誤魔化すように頭をかいた。
「俺の事を好きになってくれたのは有難いけど…俺が彼氏になったっていい事ないよ」
「それは付き合ってみないと分からないよ!」
「……俺、今はヒーローになる為に頑張りたいんだ。だから…」
「私、絶対心操くんの邪魔になったりしないから!!だって心操くん付き合っている人いないんでしょ?!それならいいじゃない!」
「それは…い」
『いるよ』
空き教室の扉を開けて入ってきたのは帽子を深く被った少女。顔はハッキリと見えないが帽子から覗かせる瞳は真っ直ぐで、心操に迫っていた女子生徒はその瞳に見つめられ、たじろいでしまった。
「そっ…うなんだ…ごめんね、彼女いるなら無理だよねっ…!」
普通科の女の子は目に涙を浮べて教室から走り去ってしまった。言と心操、2人だけになった空き教室には沈黙が流れる。そしてその沈黙を破るように心操が口を開いた。
「アンタ…」
『余計なことしたならゴメンね。でも困ってるみたいだったから』
「…俺アンタの彼氏じゃないんだけど」
『いるよって言っただけで誰が彼女とは言ってないもの』
「あー…そういう」
帽子を脱ぎながらあっけらかんとした表情で話す言を見て心操は苦笑いをすると、腰に両手を当てて緊張を解すように深く息をつく。そして息を吐き終わると言に向き直った。
「まぁ、ありがとう。正直助かった」