第13章 綺麗なアノコ
『わぁー!』
煌びやかなショップが並ぶ通路の真ん中で周囲を見回しながら目を輝かせる言。所狭しと連なった洋服屋・小物屋・本屋etc…などのお店は言にとって初めて目にする光景で、彼女にとってはテーマパークに来たのと同義だった。
「あんな言初めて見た…」
「マジで来たことなかったんだな」
普段の彼女からは考えられない喜びように、上鳴と切島は呆然と言を見つめた。
「まぁとりあえず先に飯食うか!」
「言は何か食べたいものとかあるか?」
『何でも大丈夫!でも折角だから普段なら食べられない物を食べてみたいかも!』
言のリクエストに上鳴と切島は首を捻りながら思考を巡らせた。
「普段なら食べられない物…」
「ようは金持ちが食わなそうなものとか、か…?」
「あっ、それなら────」
いい場所を思いついたのか、ハッと顔を上げる上鳴。そんな彼に連れられて来店したのは主にハンバーガーやポテトなどを取り扱い、一般市民には絶大な人気と支持を受けるファストフードのお店だった。
『ファストフード店…短時間で調理、あるいは注文してからすぐ食べられる手軽な食品を扱っているお店の事だよね?』
「そんな文献みたいな括りなのか…?」
辞書から丸ごと引き抜いたような言葉を口にした言に、切島は困惑した表情を浮かべた。
「まぁとりあえず頼もうぜ!」
「いらっしゃいませ。メニュー表をどうぞ」
『このお値段でお店の経営は大丈夫なのですか…?!』
上鳴に背を押されてレジ前に並んでいるお客さんの最後尾に並ぶ3人。そして店員さんに渡されたメニュー表を見て驚きを見せる言。セレブならではの予想外の着眼点に危うく2人は大きな声で笑いだしそうになった。
「なんか俺、面白くなってきちゃった」
そう言って、初めて見る彼女の一面に上鳴は苦笑いを浮かべながらも楽しさを滲ませた。