第13章 綺麗なアノコ
「ねぇ!昨日の雄英体育祭3位の子だよね?」
「うわっ!テレビで見た時も可愛かったけど生はもっと可愛いじゃん」
「今1人なの?なら俺たちと食事でも行かない?」
───は?
2人組の男性に声をかけられている言。そんな場面を目にした俺は自身の瞳孔が限界まで開くのを感じた。そして反射的に体が動きだし、上鳴を置いて言の下へ駆け出した。
「あっ!おい、切島!!」
上鳴の静止に振り返ることなく言目掛けて走る。
『確かにそろそろお腹も空く時間だしいいかも…』
(あのバカッ…!!)
「言!!」
俺が名前を呼んで肩を掴むと驚いた表情を見せる言。そんな顔も可愛いなと感じながら言に声をかけていた男2人に牽制の意を込めた笑顔を送る。
「すいません!今から俺たちクラスで打ち上げ会するんで!」
クラス会なんて本当はないけれど、大勢の人が来るとなれば相手も引かざるおえなくなるだろうと考え咄嗟に嘘をつく。もしこれでも相手が引かないのであれば、言を連れて逃げるしかないと考えたが
「あっそう」
「チッ…行くぞ」
予想通り男達はバツの悪そうな顔をしてその場から去って行った。
『今日ってクラスの打ち上げ会なんてあったっけ?』
そう言って俺の心配など露知らず、言は落ち着いた表情で頭にかぶっていた帽子を脱ぎ、帽子のツバを両手で持ちながら胸の前に下ろした。
「はぁ〜…まじで焦ったわ…クロアおめぇ!馬鹿野郎!!」
両膝に手を付き溜息をついた切島を見て言は彼の表情を伺うために首を傾げて腕の間から覗こうとすると勢いよく両肩を掴まれた。そして突然の切島の怒鳴り声に言は驚きのあまり、両手に持っていた帽子のツバが皺になるくらい強く握り締めてしまった。