第13章 綺麗なアノコ
熱い戦いを繰り広げた雄英体育祭が終わり、またいつも通りの平凡な日常が戻ってきた。現日付は雄英体育祭が終わった次の日。生徒達の休養と学校側がプロヒーロー達から寄せられた指名を纏め上げる為、休みとなっている。生徒達にとってはつかの間の休息だ。
そして賑わいを見せる街中で今話題の雄英高校ヒーロー科の生徒が2人。
1人は切島鋭児郎。明朗快活な好青年で硬派な漢。クラスでは所謂ムードメーカー的役割で皆から慕われている。雄英体育祭では2回戦目まで勝ち進み、惜敗。ベスト8の成績を残した。
もう1人は上鳴電気。彼もまた切島と同じクラスのムードメーカー的存在。少しチャラい節もあるが仲間思いで流行に敏感な今時の男の子だ。雄英体育祭では最終種目の1回戦で初戦敗退となったものの、ベスト16となっている。
そんな2人は片手にドリンクを持ちながら仲睦まじく休日を有意義に過ごしているようだ。彼らは暫く歩いて大きな公園内を通ると、公園の小池に架けられた橋の上に何処か遠くを眺めている少女を見つけた。心地よく流れる風に白いワンピースと白い帽子を揺らし、帽子から覗かせる艶のある黒髪は白いワンピースとの対照的な美しさを演出しており、まるで絵に描いたような美少女だった。
「うわっ、すっげー美少女」
「…てかあれって言じゃ」
上鳴が飲んでいたドリンクから口を離し呆然と見とれていると、切島が目を細めてそう言った。すると橋の上に立っていた言は突然走り出した。駆けつけた先には大きな荷物を抱えたお婆さんがいて、彼女は声をかけるとお婆さんから荷物を受け取り一緒に歩き始めた。彼らはそんな2人の行方を追った。そして公園前にあるバス停のベンチまで荷物を運ぶとお婆さんに深々と頭を下げられ少し照れた仕草でその場を離れて行った。
「休日まで人助けとか、見た目だけじゃなくて中身も完璧かよ…」
(あぁ…やっぱり変わってない)
少し離れた場所で人助けをする言の姿をを見ていた上鳴と切島。上鳴は言の人柄の良さに感心しながらドリンクを啜り、幼い時から言知っている切島は脈打つ心臓を抑え込むように右手で左胸辺りを握った。すると上鳴が焦りを混じえた声で切島の肩を叩いた。
「あれ、なんか言絡まれてね?」