第12章 雄英体育祭決着
「あ゛??」
決勝戦の控え室に向かうためにスタジアムの通路を歩いていた爆豪の目の前には息を荒くして体を震わせながら倒れている言がいた。そんな彼女の姿を見て爆豪は顔を歪めた。
「…おい」
言の異様な様子を見て爆豪は渋々声をかけるが彼女から返事が返って来ることはなくリズム感の無い荒い呼吸が聞こえてくるだけだった。爆豪はため息を吐きながら言の横にしゃがみ彼女の体を優しく起こす。
(…こいつなんでこんな汗かいてないんだ…?)
言の体を起こした時に感じた違和感。先程まで自分と試合をしていた言。例え汗が乾いたとしてもこの乾き具合は異常。他にも体温が高く、脈拍も速い。爆豪は冷静に言の周りを見るとそこには少し凹んだペットボトル。
(荒い呼吸に少なすぎる汗の量、床に転がるペットボトル…)
そして爆豪の頭に一つの答えが浮かんだ。
(脱水症……体内の何らかの物質を使ってものを作るコイツの個性。それが水分だとしたらこの症状は合致がいくな…)
爆豪は一つの答えを導き出して、床に転がるペットボトルを手にして蓋を開き言に水を飲ませようとボトルの縁を彼女の口に寄せるが口をは開かず、水を飲ませることが出来なかった。
(チッ…早く飲ませねぇと)
───脱水症は汗が出なくなるのが軽度。手足の震え体温・脈拍・呼吸の上昇が中度。そして飲み込みの困難が重度の脱水症状。こいつは飲み込みが出来ないから本能的に体が水を飲むことを拒んでいるんだろう。
今言はかなり危険な状態。保健室に連れていくにもここからでは距離があるためかなり時間がかかってしまう。そして爆豪は自身との葛藤の末にある行動に出る。
「……目ェ覚ますなよ…」
爆豪はそう呟いてペットボトルの水を口に含み言に口付けをする。そして口移しに自分が含んだ水を言に飲ませた。