第11章 互いが互いのヒーロー
緑谷はボロボロの体で今尚攻勢に出る。リカバリーガールの個性で治してもらえると言う事もあってか緑谷は無茶をしている。でも個性を制御する事が出来ない彼にとってはこれが轟と渡り合える現時点での最善策。しかしいくら治るからと言っても自ら激痛に飛び込んでいくのは相応の覚悟が伴う。
『ねぇ、何が君をそんなに突き動かすの…?』
とうとう手を握ることも困難になったのか口の中に指を入れて指を弾き個性を使う緑谷。そんな彼の行動を見て轟が戸惑いの表情を見せる。
「何でそこまで…」
「期待に応えたいんだ…!笑って応えられるような…カッコイイ人に…”なりたいんだ”!!」
下に向けていた顔を上げる緑谷。
「だから全力で!やってんだ皆!君の境遇も君の”決心”も僕なんかに計り知れるもんじゃないでも…全力も出さないで1番になって完全否定なんてフザけるなって今は思ってる!」
「うるせぇ…」
そんな緑谷の言葉を聞いて不愉快そうに口を開く。そして轟の腕には霜が張り付く。
「だから僕は勝つ!!君を超えてっ!!」
「親父を…」
「君の!力じゃないか!!」
その言葉が一体轟くんの何を突き動かしたのか私たちには分からない。けれど彼は眉を寄せて今にも泣き出しそうな表情をしていた。そして体からは溢れんばかりの炎が吹き出る。
『轟くんが左を使った…』
それは轟々と赤く燃える…とても綺麗な色をした炎だった。そしてそんな轟の姿を見て言は自身の胸の奥が熱くなるのを感じた。
『緑谷くん…貴方はこんな時にまで誰かを救っちゃうのね…』