第11章 互いが互いのヒーロー
「あ…言!」
言は切島に声をかけられステージに向けていた視線を彼の顔に移す。
「あの、隣…座っていいか?」
『うん、大丈夫だよ?』
言はいつもの漢気溢れる切島からはあまり考えられない挙動不審な言動に首を傾げつつ視線をステージで戦う2人に戻す。
その後も轟が氷結を放つ度に緑谷が自身の指や腕を損傷。今の緑谷の指や腕は見るに耐え難い程に青黒く変色していた。そんな緑谷の姿を見て会場がざわつき始めた時、轟は一瞬観客席を見て緑谷に何か言っているようだった。そして轟がトドメの氷結を緑谷に放った時
「どこ見てるんだ…!」
損傷した指をまた使い轟の氷結を防ぐ。
『緑谷くん…!!』
「何でそこまで…」
「震えているよ轟くん、個性だって身体機能の1つ。君自身冷気に耐えられる限度があるんだろう…!?で、それって左側の熱を使えば解熱出来るもんなんじゃないのか………?」
体の節々を襲う強烈な痛みに耐えているのか体中から汗を吹き出し、声を震わせる緑谷。そして今にも飛びかかりそうな形相で轟を睨んでいた。
「………っ!!皆…本気でやってる。勝って…目標に近付く為に…っ1番になる為に!”半分”の力で勝つ?!まだ僕は君に傷一つつけられちゃいないぞ!」
緑谷の言葉に顔を歪める轟。そして痛々しい右手を力の限り握り緑谷は彼に大きな声で言い放つ。
「全力でかかって来い!!」