第11章 互いが互いのヒーロー
言の胸で泣き終えた麗日は涙のせいで目元が赤く腫れ上がっていた。言は彼女に目を冷やしてから観客席に戻ろうと提案したが緑谷の試合を最初から見たい為なのか首を横に振る。そして観客席に戻り、案の定彼女の顔を見た飯田が誰かに目を潰されたのかと勘違いする。
「今回の体育祭両者トップクラスの成績!!まさしく両雄並び立ち今!緑谷対轟 START!!」
試合開始と同時に轟の氷結と緑谷の自損覚悟の打消しがぶつかり合う。
「ゲッ始まってんじゃん!」
「お!切島2回戦進出やったな!」
スタジアムの通路から先の試合で受けた怪我の治療をしてもらっていたのか切島が遅れて観客席に姿を現す。彼の体操服は試合の凄烈さを物語るように擦り切れてボロボロになっていた。
「そうよ次おめーとだ爆豪!」
「ぶっ殺す」
「ハッハッハやってみな!」
そんな爆豪の不謹慎な返事を切島は爽やかに受け流す。
「…とか言っておめーも轟も強烈な範囲攻撃ポンポン出してくるからなー…」
「ポンポンじゃねえよナメんな」
爆豪は緑谷と轟の試合から目を離すことなく落ち着いた声色でそう答える。
「ん?」
「筋肉酷使すりゃ筋繊維が切れるし走り続けりゃ息切れる個性だって身体機能だ奴にも何らかの”限度”はあるハズだろ」
そう言うと爆豪はチラリと自身の左手に視線を向けた。それは麗日との試合で流星群を止めるために使った左手。
(それは爆豪さんもしかりと言うことね…)