第11章 互いが互いのヒーロー
お茶子ちゃん対爆豪さんの試合が終わり私は駆け足で選手控え室にへと向かう。その時保健室から戻ってきた百ちゃんと鉢合わせる
『百ちゃん!怪我大丈夫だった?』
「え、えぇ…何ともありませんでしたわ」
百ちゃんはぎこちない笑みを浮かべて答える。私はそんな百ちゃんに違和感を抱きながらも簡単に返事を済ませて走り去っていく。
控え室前に着き私は一声かけて扉をノックすると中にいるお茶子ちゃんから返事が返ってくる。
「ごめん…言ちゃん…せっかく来てくれてありがたいんやけど今、人様に見せられる様な顔しとらんから…」
一声聞いただけでも分かる涙声。きっと泣いていたんだろう…でもこれだけはお茶子ちゃんに伝えたい。
『…じゃあ話だけでもいいから聞いて欲しいの』
控え室からはYESともNOとも返事が来ないので私は1人扉の前で話を始める。
『…私ね、この体育祭が始まってちゃんと皆の顔を見ていないことに気がついたの。あんなに近くで皆が努力する姿を見てきたのに皆が今どんな気持ちでこの体育祭に臨んでいるか知っていたはずなのに私は自分の事で精一杯だった』
私は皆が努力する授業風景や演習風景。そして皆がどんな思いでこの体育祭に臨んでいたかを思い出しながら話す。
『それでね、百ちゃんとの試合が終わった後に色んな選手の人の顔を見た、たくさん見たよ。その中で1番かっこよかったのはお茶子ちゃん!!貴女の顔だよ、絶対に諦めない、負けない、負けたくない!勝ちたいって痛いほど伝わってきた!』
私は目の前の扉に手を当てて、中にいるお茶子ちゃんに届くよう大きな声を出す。
『お茶子ちゃん、貴女は誰が何と言おうと!絶対に優しくて勇敢なヒーローになれる!』
私が息を切らしながらそう言い切ると控え室の扉がガチャリと開く。扉の先には目に涙をためて髪をぐしゃりと握るお茶子ちゃんの姿があった。
『お茶子ちゃ…』
私が名前を呼ぶとお茶子ちゃんは私の胸に勢いよく飛び込んでくる。
「言ちゃん…言ちゃん…!」
『私、お茶子ちゃんの分も頑張るよ。だから見てて』
お茶子ちゃんは涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら「うん、うん」と何度も頷いた。