第11章 互いが互いのヒーロー
緑谷と飯田の2人に決勝で会おうと約束をした麗日が控え室から出てくる。
「わっ!言ちゃんこんなとこでどうしたの…?」
扉の真横で待っていた言を見て驚いたのか、声を上げて目を丸くする。そして言は歯切れ悪く彼女に声をかける。
『ごめんね、突然…試合前にこんなこと聞くのもアレだと思うから…もし答えたくなかったら答えなくて大丈夫』
そんなオドオドと言葉を口にする言を見て不思議そうに首を傾げる麗日。そして言は彼女と人気のない場所に移動して勇気を振り絞るように自身の手を握る。
『お茶子ちゃんはどうしてヒーローになりたいの?』
そんな唐突な質問に驚いた表情を見せる麗日。しかし言の真剣な眼差しを見て何かを理解したのか、嫌な顔をひとつも見せずに彼女は自分がヒーローを目指している理由を答えてくれた。
「色々あるけど…簡潔に言うなら私は、ヒーローになってお金稼いで…父ちゃん母ちゃんに楽させてあげたいから。だよ」
『…そっか、ありがとうお茶子ちゃん。うん、とても素敵…』
緑谷や轟とも違うヒーロー目指す理由。でも言には彼女の理由が1番心に響いたのだ。
【家族の為にヒーローになりたい】
(そっか私は…家族を守れるヒーローになりたいんだ。そして私の家族が何事もなく笑顔で暮らせるようにこの世界を平和にするヒーローになりたいんだ…)
麗日の言葉で気づくことができたヒーローになりたい理由。そして言は麗日に今までの事を全て話した。自分が犯した過ちや百とは本当の姉妹出ないことも。普通であればこんな事を他の人に話したりしないが麗日になら全てを話してもいいと思えた。まだ出会って日は浅いがそれでも彼女はそれだけ信頼出来る人だと知っているから。
『私、皆がこんなに本気で戦っているのに本気を出さないで挙句の果てわざと負けようとしてた…でも、二度とそんなふざけたことしないって決めた。だからこの体育祭、本気で勝ちに行く』
麗日は何も答えずに真剣な表情で言の話を聞いた。そして言が話終わると「私も負けてらんないね」と呟いた。
「じゃあ言ちゃんにも改めて…準決勝で会おうぜ!!」