第10章 双子対決
声の揃った「Allez!(始め)」の掛け声で私たちは同時に走り出す。
(百ちゃんの個性はものを作るのにはある程度時間がかかる。だから…)
『速攻できめる!』
私は百ちゃんとの距離が4m程になると走り出した足を止め、その場で個性を使う。
『[壁]』
百ちゃんを囲うように4枚の壁が地面から連続して勢いよく現れる。しかし天井は壁で塞がずに開いたままだ。
「上がガラ空きですわ!」
百ちゃんはその事にすぐ気がついたのか囲まれた壁の中でそう言い放ち上から脱出しようとする。だがそんな百ちゃんを見て私は焦る表情を見せることもなく、寧ろニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
『開けてたからねっ…[水]!』
壁の中には私が出現させた水がどっぷりと入る。
(水の中なら判断が鈍る…このまま追い込む!)
「これしきっ…!」
百ちゃんは壁の中で重りを創造しその重みで水が溢れ出し、同時に百ちゃんも脱出する。
『だよね、百ちゃんならそうすると思ったよ!』
そして壁の中から出てきた百ちゃんの足元には先程溢れ出た水によって水溜まりが出来ていた。
『[電流]!』
「くっ…!!」
私は人が受けて致命傷にならない10mAの電流を足元の水溜まりに流すと百ちゃんは体が痺れたのかその場に膝をつく。
『チェックメイト、だよ』
「まだっ…!」
『[壁]!!』
そして私はすかさず電流で痺れている百ちゃんの目の前に壁を出現させ場外にへとふきとばす。そしてステージの外に目を向けると倒れている百ちゃんの姿があった。
「八百万百…場外!!2回戦進出、八百万言!」
しっかりと百ちゃんが場外に出たのを確認して一瞬静まり返った会場にミッドナイト先生のアナウンスが響き、試合の決着が着く。そして会場は観客の大きな歓声で溢れかえる。活気溢れる会場を横目に私は両手を腰に当て息をつきながら空を見上げる。
『…今日って、こんなにいい天気だったんだ』
スタジアムから見上げた空は雲ひとつない日差しがジリジリと照りつける見事な晴天だった。まるで今の自分の晴れやかな心のように───…