第10章 双子対決
───自分の気持ちに正直に…私にそんな資格があるの?私はこの体育祭に本気で挑んでいる百ちゃんやクラスの皆、選手の人達に本気で挑まなかった。そんなの皆にとっては屈辱じゃないか。
百の言葉を聞いて揺れ動く言。肩を掴まれたまま眉を下げ潤わせた瞳で俯く。
『で、でも…私は百ちゃんだけじゃなく他の人たちにも酷いことをしてしまった!』
「ならしっかりと謝ればいいのです。人は間違えて成長していくもの…だから拾い子とか八百万家とかに囚われないで!言は言です!しっかりと、胸を張って生きなさい!!」
私は百ちゃんに背中を強く叩かれ、暗闇に目が慣れたのか百ちゃんとパチリと視線が合う。まるで自分たちにだけスポットライトが当てられたようにお互いの顔や姿が鮮明になる。視線が合った百ちゃんの大きな瞳からは今すぐにでも雫が溢れ出しそうだった。
(私は私。胸を張って生きろ。ねぇ…いいの?こんな私がそんな風に生きてもいいの?本当はね…この高校で、1年A組の皆と過ごして。本当はなりたいと思っていた。憧れてしまったのそれを許してくれる…?)
『ねぇ百ちゃん…こんな私でもヒーローになっていいのかな…!?』
「…っあたりまえですわ!!」
そんな彼女の言葉で私の心の錘が無くなっていくように、私たちを囲んでいた壁がミシミシと音をたてながら崩れる。そして崩れる壁の隙間から外の光が差し込む。私はその光に目を細めながら涙を流し、誰にも聞こえない声でぽつりと呟く。
『…ありがとう”お姉ちゃん”』