第10章 双子対決
『でも本当は、それ以上にっ…!結果を残せなかった時…優秀じゃなかった時…皆に見捨てられるんじゃないかって、失望されるんじゃないかって怖くて…!!だから…わざと負けんたんだ、手を抜いたんだってそんな言い訳を自分に言い聞かせてた。そうしていないと自分を保てなかったから…!!』
立ち上がった言は両手を胸の前で強く握り締めた。そして今まで溜め込んでいた感情の蓋の止め方など分かるはずもなく、まるで小さな子どものようにそれを垂れ流した。けれども本当の生みの親も知らず捨てられ、赤の他人の家族に拾われた言。そんな壮絶な人生を送ってきた彼女が抱く”見捨てられる”や”失望” の言葉の重みいったいどれほどだったのだろうか。どれほど苦しんだだろうか。百はあまりにも悲痛な言の叫びを聞いて立ち竦んでしまった。
『私はただ百ちゃんを守りたかっただけなのにあんな顔させたい訳じゃなかったの…なのに私が百ちゃんを1番傷つけてしまった!!』
そして零れる涙と惨めな自分の顔を隠すように両手で顔を覆う。
『私、どうすればいいの…?』
そう弱々しく声を漏らした言は、今すぐにでもこの暗闇に飲み込まれてしまいそうで。ほんの一瞬、瞬きをして彼女から目を離してしまったら、パッと神隠しにあったように消えてしまいそうな儚さだった。そしてそんな言の声を聞いた百は戸惑う心の闇を打ち払い暗闇の中、確かに感じる言の気配を察知して声を放つ。
「言…私たち家族があなたを見捨てるなど、失望の眼差しを向けるなどそんな事絶対にありません!!”あの日”…貴女を迎え入れたあの日から、血が繋がっていなくとも貴女はもう家族なのだから!それに言は他人を想いやれて、勉強も出来て、運動神経もいい。他にも…いっぱい!いっぱい!いい所があるとても素敵な人なんです!」
言が、自分の大事な大事ないもうとがこんなにも苦しんでいたのに気がついてあげれなかった。向き合ってあげれなかった。と、自分の無力さに唇を噛み締めながら百は、暗闇の中言を見つけ出して肩を掴む。
「だから自分を認めてあげて下さい!!自分の気持ちに正直になって!」