第10章 双子対決
「どういうことだぁこれは?!」
ステージ上に広がっていた煙が晴れ客席や実況席からも良く見えるようになる。そしてステージの異様な光景に会場中がどよめく。
『え…いや、なに…してるの?』
私もそんな異様な光景を見て動揺のあまり声を震わせながら百ちゃんを指さす。
『ねえ、なんでさ…個性使ってないの…?いや、それよりも何で1歩も動いてないの!何してるの!!』
「何してるのはこっちのセリフですわ…」
私が大きな声で噛み付くように質問すると百ちゃんは怒りを露にした表情を浮かべいつもの彼女からは聞こえることのない声のトーンでそう呟いた。
「私言いましたわよね…?”手加減はなし”だと…そう忠告したのにこの様な稚拙な作戦ふざけているのですか」
『い、いや…ふざけてなんかいな…』
「そうですね、言い方を変えましょうか。私をなめているのですか」
私は百ちゃんの圧に押されながらも首を横に振る。しかしそんな私の言動が彼女の怒りをより駆り立てたのか長い溜息をついて私を睨む。
『そんなことはない!私が百ちゃんをなめるなんて!!』
「例え貴女がそうでなくとも私はその様に受け取れるのです!!」
『…っ!』
「どうせ貴方はこの様に考えたのでしょう…」
そして狼狽える私を後目に百ちゃんは私が先程考えた作戦を全て完璧に言い当てた。
『なんでっ…全部わかるの…』
「わかりますわ、今までだってずっと…!!」
『今までって…』
「…今まで貴女が私に”わざと”負けていた事など知っています。中学の時も!雄英高校の推薦を断った事も…!高校に入ってからも!」
私は今までの事が百ちゃんにバレているとは考えもしなかったので、彼女に返す言葉もなく俯き、黙り込んでしまう。
「言が私より優秀なのはわかっています」
『そんなことっ…!!!』
「それならどうしてわざと私に負けるような事をなさるのですか!!私は貴女がわざと私に負けていると知った時どれほど惨めな気持ちで、どれほどの劣等感に満ち溢れたかおわかりですか!?」
私が俯いていた顔を勢いよく上げると百ちゃんが自身の体操服の胸ぐらを強く握りしめながら悲愴な面持ちで私に訴えかけていた。