第9章 それぞれの覚悟
「よし!じゃあお詫びに俺の一発ギャグを見せてあげよう!」
『えっ…!?』
「いくよー! 私が来た!!」
通形先輩はそう言ってオールマイト先生の顔真似をしながら筋骨隆々なその姿で腕を腰に当てる。突然の一発ギャグに私はなんの反応も返せずただ呆然と立ち尽くした。
「こりゃまた大スベリ!!」
『あっ、いえ凄く似てました!でも、私のお友達がオールマイト先生の大ファンで、いつもやっていて少し見慣れていたというか…』
「そうなんだ!俺の知り合いにもオールマイトの大ファンがいてね!是非キミのお友達とも会わせてみたいな!」
『ええ、きっと彼も喜びます』
私はそう言って優しく微笑むと通形先輩が嬉しそうに口角を上げる。
「やっと自然に笑ってくれたね!!」
『えっ…』
「だってキミ、ずっと浮かない顔してるんだもん。女の子は笑った顔が1番!」
通形先輩は人差し指でクイッと口角を持ち上げる仕草をして私に笑いかける。
「俺も笑顔は絶やさないようにしているよ!何故って?全てとまではいかないが100万。オールではなくミリオンを救う人間! ”ルミリオン”だからね!」
『ルミリオン…?』
「そう!ルミリオン!俺のヒーロー名さ!例年通りなら丁度この体育祭が終わったあとにヒーロー名を付ける授業があるはず!」
『そんな授業が…』
「ヒーロー名は”名は体を表す”!しっかりと考えて付けた方がいいよ!」
通形先輩は眩しすぎる笑顔を私に向けて私の肩にポンと手を置く。
「じゃあ俺は3年ステージに戻るよ!言ちゃんも午後の部頑張ってね!」
凄まじい勢いで現れたと思った通形先輩は私に色々と深い話をして嵐のように去っていった。
『ヒーロー名、か…』
ヒーローを目指していない私にとってはヒーロー名など考えたこともなかった。名は体を表す…私がもしヒーローを志した時、自分はどんなヒーローになりたいと思うのだろうかそんな事を考えたら話が尽きない。私の悪い癖だ。そして会場の壁にかけられている時計を見ると1時間の昼休憩もあと20分程度。私はまるで足に鉛でもくっついているかの様な気持ちで、昼食を済ませるために食堂にへと向かった。