第9章 それぞれの覚悟
(なんなんだろうこの状況…)
私は虚無な顔を浮かべながら心の中でそう呟く。轟くんと緑谷くんの会話が終わってそろそろ数分経つが爆豪さんは一向に私を離す気配がない。二人の会話が終わった後からずっと苦い顔をして遠くを見つめ何かを考えているようだった。正直、彼の根が優しい事はこの間のマスコミ侵入事件で重々理解したが、私が彼に苦手意識を持っているのもまた事実。主に体育館での出来事が決定打となっているが……とりあえずこの体勢のままでは恥ずかしさと気まずさのあまり頭が爆発してしまいそうだ。
(もしかして爆豪さんの手いい匂いするとか考えてたのバレた…?え、死?私死ぬ?)
最初は恥ずかしいと言う気持ちだったが今となるとだんだん恐怖に変わってくる。
『ば、爆豪さん…そろそろ離して頂けると有難いのですが…』
私は勇気を振り絞り、恐る恐る爆豪さんに声をかけるが彼からの返事は帰ってこない。
(無視…)
流石に無視は傷つく…なんてことを考えながらもこれはもう自力で抜け出すしかないそう思い爆豪さんと密着する体を少し捻ってみる。
「…てめぇいつまでくっついていやがんだ!!離れろ!!!」
私が体を捻った瞬間に爆豪さんはハッとしたように目を見開き、私の肩を凄い勢いで掴み距離を取る。
(え、え〜…?!)
私がそんな理不尽すぎる彼の行動に開いた口が塞がらないままその場に立ち尽くしていると爆豪さんはいつの間にか立ち去ってしまっていた。
『やっぱり爆豪さんちょっと苦手だ…』
私は今回の件で爆豪さんとの心の壁がまた少し大きくなったのであった。