第9章 それぞれの覚悟
そんな葛藤を1人で続けていると2人の表情は見えないが、彼らの間に異様な空気が漂い始めたのが肌で感じられた。
「えと…」
「気圧された自分の誓約を破っちまう程によ飯田も上鳴も八百万も常闇も麗日も…感じてなかった最後の場面。あの場で俺だけが気圧された」
自分の誓約…?騎馬戦最後の場面と言うと1000万を奪われた緑谷くんが轟くんに全力で向かっていた場面だよね…あの時の轟くんは…確か左、炎を出していたような。
「……それつまり…どういう…」
「お前に同様の何かを感じたことだなァ……オールマイトの隠し子か何かか?」
(え…???そうなるの…?)
体育祭の開会式前に轟くんが緑谷くんに放った「おまえオールマイトに目ぇかけられてるよな?」の意図は彼が緑谷くんとオールマイトの秘密に気がついた訳ではなく。緑谷くんがオールマイトの隠し子かもしれないという轟くんの少しズレた考えからの発言だったようだ。
「違うよそれは…って言っても、もし本当にそれ…隠し子だったら違うって言うに決まってるから納得しないと思うけどとにかくそんなんじゃなくて…」
緑谷くんは表情は見えなくても震えた声から慌てふためきながら精一杯言い訳をする。USJの時から薄々勘づいてはいたけれども緑谷くんは非常事態の時や不意をつかれた時にボロが出やすい。やっぱり2人に着いてきて正解だったと思う。もしこのまま轟くんが緑谷くんとオールマイト先生の関係を詮索するのであれば私はここで迷ったフリをしてこのまま2人の間に割って入りに行ける。とりあえずまだ様子見と言ったところかな。
「そもそもその…逆に聞くけど…なんで僕なんかにそんな……」
「……”そんなんじゃなくて”って言い方は少なくとも何かしら言えない繋がりがあるってことだな」
(変なところで鋭いな轟くん)