第9章 それぞれの覚悟
騎馬戦の決着が着き、悔しがる者・相手を褒める者・謙遜する者など全員が先程火花を散らし戦っていたとは思えぬほど和やかに会話を交わしていた。そして1時間程昼休憩挟んでから午後の部が開始されるので皆、体を休ませるためや昼食を摂るために競技場を後にする。
『あれ、緑谷くんと轟くん』
そして私が目にしたのは競技を終えた選手たちとは全く別の方向へと向かう緑谷くんと轟くんの姿。そういえば轟くんは体育祭が始まってから結構緑谷くんのことを目の敵にしてるみたいだったけどそれは緑谷くんの秘密に気づいたのか否か。
『この目で確かめなくちゃ…』
私は2人にバレないように少し遠回りをして2人の話が聞こえる位置に移動した。
(ここならバレずに聞けそう…)
私は傍から見たら完全に不審者と同様の動きをしてスタジアムの壁から2人を覗く。しかし私の背後から人の気配がして後ろを振り向くとそこには眉間に皺を寄せた爆豪さんがいた。
『爆ご……ンム!?』
「声出すんじゃねぇ…」
私は彼を指さして名前を呼ぼうとした時、彼が私の口を無理やり手で塞いで体を引っ張り緑谷くんや轟くんにバレない声量でそう囁く。
(声出すなって、この体勢…とても恥ずかしいんだけど…)
今の体勢の説明をすると爆豪さんが壁に寄りかかりその爆豪さんに寄りかかるように私が彼に抱きしめられている体勢だ。よく百ちゃんと少女漫画なるものを読んだがこんな少女漫画のようなことが現実に、しかも自分に起こるだなんて誰が考えるだろうか。私だってもう高校生の女だ、たとえ相手がクソを下水で煮込んだ性格をしている爆豪さんでもドキドキするものはしてしまう。
しかも爆豪さんの手少し甘くていい匂いがする…って駄目駄目!これでは変態!素数を数えて…いや元素名を唱えよう。水素…窒素…酸素…あれ、そういえば窒素1個と酸素2個のでできた原子団って……
ニトロッッ!!
バカっ!何で気を紛らわそうとしてわざわざ爆豪さんの事を思い出すようなことしてるの私!あっ、もうダメだ…他のことを考えようとしても全部爆豪さんに繋がる気がしてきたもういいや…諦めよう…なんか1人でこんな葛藤してるのも恥ずかしくなってきた…