第11章 この日や天晴れて、千里に雲の立ち居もなく
村人が草庵に到着し、子供達の姿を見て嬉し涙を流した。
公任は陽露華を布団に包んで横抱きにして、背中に3人分の旅荷物を背負う。
銀邇はうまく歩けない少年らを手伝う。
村に皆が到着すれば、出迎えに来た村人も大声で騒ぎ立てた。
涙を流す者、安堵で腰が抜ける者……皆感情を爆発させて無事を喜んだ。
花子は息子を抱き抱えて夫の元へ走って行く。
老爺のようにやつれた夫は妻と息子を見ると、畑作業をやめ、胸に飛び込んできた愛する2人をしっかりと抱きとめた。
「もう! すっかり草臥れて! だらしない人ね!」
「よかった……よかった……よかった……!」
花子は口ではそう言うものの、目には涙が滲み、顔は笑っていた。夫もやつれた顔を涙で濡らしていた。
公任と陽露華は村の診療所に案内され、医師がすぐに診てくれたが異常は無く、処方薬も特に無かった。絶対安静と言われただけで終わった。
陽露華は花子の家で暫く世話になることになった。
公任は陽露華に付き添い、銀邇は村の子供達の遊び相手にされた。
子供らがまた元気に遊び回れるように、と言う意味も込めた“遊び”である。
3日後、陽露華もだいぶ回復してきた頃。
村で小さな祭りが執り行われた。
子供達の無事を祝っての一晩だけの宴会だ。
そこには公任、銀邇、陽露華の姿があった。
3人は翌日には発つ。それを聞いた村人達による感謝の祭りだ。
公任も銀邇も、瑞雲については詳しく語らなかった。『黄金の草原』も異能も知らない方がいい。
村人達もまた、詳しくは聞かなかった。
「ありがとうございました」
花子が深々と頭を下げるので、陽露華は戸惑った。
「感謝されるようなことなど……」
「いいえ、皆さんは村を救ってくださいました。感謝してもしきれません」
陽露華は感謝の印に花子から新しい着物を貰った。これからの時期に合う薄い生地の着物。白と水色の縦縞で、裾には色とりどりの風車が散りばめられている。
決して裕福でない家庭に置かれている代物ではない。
「大切にします。……そうだ、今夜は村のみんなで星を見るのは如何でしょう?」
「星……ですか?」
きょとんとする花子に陽露華は微笑みかけた。
「天気がいいので、素敵なものが見れます」