第11章 この日や天晴れて、千里に雲の立ち居もなく
縁側から入り、陽露華の寝る部屋に入る。
陽露華の枕元には、銀邇に無理を命じた少女が座っていた。
「あ……」
「まだ起きないで。痛むでしょ」
「ご、ごめんなさい」
公任と銀邇を見た陽露華が体を起こそうとしたが、少女に止められる。
「俺たちは気にしないで。無理のないようにね」
公任が優しく声をかけ、少女と反対側に回って座る。銀邇はその横に座った。
「自己紹介が遅れてすみません。花子と申します」
少女は礼儀正しくお辞儀をした。公任と銀邇も改めて自己紹介をする。
花子の話によれば、動ける子供が村人を呼んできてくれているところで、村でしっかりと治療をするそうだ。
公任が、(自分が気絶させたことは伏せて)操られていた少女らと、淫らな行為を強いられた少年らの様子を尋ねると、花子は皆回復しつつあると回答した。
彼らは個人差があるものの、陽露華より容態が良好らしい。呼びに行っている子供は、中でもすぐに動けるようになった子らが行っている。
「ここまで重いのは陽露華ちゃんだけ……」
公任の呟きに花子が付け加える。
「おそらくですが、刻印されて間も無く解除作業を行ったので、疲労が原因かと。詳しいことは村で診ないとわかりませんが」
「解除作業」という言葉に銀邇が眉を顰めたが、すぐに戻る。
公任は異能が関すると考えていたが、一旦はその考えを振り払うことにした。
ふと視線を感じ、公任が目をやると陽露華が心配そうに見上げていた。
「すみません。私のせいでご迷惑を」
「陽露華ちゃんは何も悪くないよ」
公任は陽露華の頭を撫でた。
「何かあった時は大きな音を立てるように言われていたのに、それも間に合わず……」
「今回はしょうがない。俺たちも僧侶だからって信用しすぎた」
たられば言っても何もならない。過ぎたことは悔やんでも、恨むことはできない。
「これからは絶対、一人にしないから」
公任は自身の額を陽露華の額につける。
公任の誓うその姿は、銀邇には眩しくて、そして否応に劣等感を湧き上がらせる。
自分の心に決着をつける日が近い。