第9章 大方は真しくあひしらひて、偏に信ぜず、また疑い嘲るべからず
力を使う様子を見たと言う女性は、少女に使っている様子を見たと言った。
村に皆で草庵に行った時に見たのは、歌う少女たち。少年の姿は無かった。
陽露華は自分の意識外で公任を拒んだ。
瑞雲の能力はおそらく、催眠の類。少女限定で効果があるようだ。
瑞雲に会う前に会った2人の子供。一見すると、悪戯をした男子を怒った女子が追いかけていたように見えるが。
これを踏まえると、別の見方が出来る。
公任と銀邇が草庵に続く小道を抜けると、草庵の縁側から引っ張り込まれる市松模様の着物が見えた。
「そこの君! 待って!」
公任は大声で呼び止めながら駆け出したが、ピシャリと戸が閉められ、内側から鍵のかかる音がした。一瞬、縁側の磨り硝子の戸を叩き割ろうとする衝動に駆られたが、すんでのところで思い留まり、玄関の方に回る。
「公任、お前さっき……」
「何も言うな!」
銀邇は先程の公任が強行突破しようとしたことに気づいていた。だから、その先も予測出来る。
「怒りに任せて暴れるのは、後からでも出来る」
銀邇の言葉に公任は口の端を持ち上げた。
「うん」