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黄金の草原

第7章 いま一度めぐりあわせて賜び給へ



梅花は困ったように微笑んだ。


「私達は、無能な忍者です。里に帰って、こっ酷く叱られようと思います」


竹井も異論はないようで肯いていた。

公任は梅花の話の途中から、意味ありげに考え込んでいて、その思考が今終わった。


「ちょっと、その『無能な忍者』さん達の力量を測ってみますか」
「え?」


梅花は目を丸くした。公任の声を聞いた竹井は、驚いて松永を叩き起こしてしまう。


「忍者の得意分野は、いかなる状況にも『耐え忍ぶ精神力』、音を立てず疾風の如く駆ける『機動力と俊敏性』、そして小さな武器で急所を絶対に外さない『正確な暗殺』……」


公任は悪戯を仕掛けようとする子供の様な笑みを見せる。
梅花は呆気に取られ、竹井は怯え、松永は大体把握していた。


「任務は簡単。俺と銀ちゃんと陽露華ちゃんの旅荷物、それから俺の着替えを持って……そうだな、100数える間に帰ってきて」
「公任さん、今夜出るんですか?」


陽露華の問いに、公任は笑った。


「うん、そうだよ。遅かれ早かれ、陽露華ちゃんは綺緋様に殺されるし、そこで寝てる暁夫様を探しに、過保護の兄貴が来るからね」


川を葉が流れる様に恐ろしい予想を披露した公任は、梅花達に「追加任務」を言い渡す。


「さっき言った通りだ。綺緋様の暗殺も忘れずにね?毒殺でもなんでもいい、証拠が残らなければね。それから君達3人も今夜中に撤収する事。いいね?」


松永、竹井、梅花の目は、もう使用人の顔ではなかった。


「散ッ!」


公任の合図で、3人の忍者は姿を消した。


「それでは銀ちゃん、数えてて」
「やっぱ俺か」


銀邇はその場にあぐらをかいて座った。ぶつぶつと数を数え始める。

陽露華は館を見上げた。
夜会は終わったのか、ほとんどの部屋の窓に厚手のカーテンが閉められているが、光が漏れている。


「心配?」
「ええ、まあ少し……」


公任に聞かれて陽露華は戸惑った。完全に信用したわけではないが、彼らを危険な目に合わせている。

陽露華は公任を見上げた。




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