第7章 いま一度めぐりあわせて賜び給へ
竹井には何が見えているのだろう。
獲物を狙う白虎か、その場に釘付けにする迫力の青龍か、森羅万象を見定める白蛇か……。
公任の圧力に耐えかねた竹井は、刀を捨て、両手を上げた。
公任は興味を失ったように竹井から目を離すと、いつもの調子で陽露華に近寄る。
「陽露華ちゃーん! 大丈夫だった? 大きな声でって言ったけど、大きな音はたてなくて良かったんだよ?」
目は普段の焦げ茶色に戻っている。
「お前……!」
土のついた銀邇の刀で殴打しようと梅花が走り出し、公任に片手で止められ、銀邇の刀をあっさり奪われた。
「刀をこんな使い方しちゃ駄目じゃないですかー? 武士の血を引く又兵衛お爺さんが泣いちゃいますよー? あ! もしかして……」
公任はわざとらしく口角を上げた。
「刀が重くて鞘から抜けないんですかー? かわいそー!」
梅花は公任の煽りにまんまと引っかかって、5寸針を数本投げ付け、公任にあっさり弾かれる。
「戦闘の基本は常に冷静でいる事。忍者の血を引く梅花さんなら、わかってるでしょ?」
梅花は何も言わずに顔を逸らした。
陽露華は巻物を拾い上げて土を払う。丁寧に巻き直して懐に戻した。
公任は刀を鞘に戻して、ジャケットのシワを伸ばす。
「梅花さん。全部話してください」
公任が梅花を見ると、梅花は陽露華を見て、頷いた。
「でも、銀ちゃんの解放の方が先だよね。……閂壊していい?」
「鍵ならここに」