第5章 われも人もやすからぬ乱れ出で来るやうもあらむよりは
陽露華は暫く考え、答えようとしたが息を詰まらせ、
「くちゅんっ」
くしゃみをした。
公任がジャケットを脱ぐより先に銀邇が毛布を掛けた。
「中に戻ろうか」
3人が玄関に入ると、梅花が怪訝そうな顔で出迎えた。
「先程、ご乱心する紅子様が部屋にお籠もりになられたのですが、何かご存知ですか?」
梅花の問い掛けに、3人は首を横に振った。
まだ納得いかない様子で梅花は仕事に戻っていく。
公任の部屋で、陽露華は紙に家系図を書いた。
城之内家の百合子(ゆりこ)は佐倉家の又兵衛(またべえ)に嫁入りし、6人の子供に恵まれた。
生まれた順に、長女・沙織(さおり)、長男・又吉(またきち)、次女・綺緋(きひ)、三女・桃(もも)、次男・吉助(きちすけ)、四女・朱音(あかね)。
長女・沙織は夫・紅治郎(こうじろう)との間に2人の娘がいる。長女・紅子(べにこ)、次女・紅緒(べにお)。
紅子は望まぬ結婚を拒み、21歳にして未だ独身。
一方で紅緒は、現在19歳。姉・紅子から流れた縁談を受け入れ、2人の息子がいる。
長男・又吉は妻・幸(さち)との間に3人の子供がいる。
生まれた順に、長男・幸太(こうた)、次男・暁夫(あきお)、長女・幸恵(さちえ)。
幸太は結婚し、娘が1人いる。
次女・綺緋は夫・道治(みちはる)との間で陽露華を生む。
しかし、綺緋は道治を毛嫌いしていたので、憂さ晴らしに遠出した先で楊花(ようか)を身篭って帰ってきた。
道治に陽露華だけでなく、楊花の世話も押し付ける。
三女・桃は京極家の冬彦(ふゆひこ)に嫁ぎ、3人の子供がいる。
生まれた順に、長女・桃花(とうか)、長男・冬道(ふゆみち)、次女・冬美(ふゆみ)。
次男・吉助は藤岡家の純連(すみれ)に婿入りし、2人の子供がいる。
生まれた順に、長女・澄香(すみか)、長男・澄義(すみよし)。
なお、四女の朱音は24歳だが、まだ独身である。