第5章 われも人もやすからぬ乱れ出で来るやうもあらむよりは
「来ている人はこれで全員です」
「やっぱり多いな……」
「6人の子供とその家族が集まってますので」
総勢28名。
公任はこの全員と顔合わせを済ませている。
陽露華は公任に、家系図が見たかった理由を聞こうとしたら、部屋の扉を叩かれた。
公任は扉を少し開け、自身の体で陽露華と銀邇を相手の視界に入れない様にする。
銀邇と陽露華も扉の番側へ寄って、死角に入る。
訪問者は長男・又吉の次男・暁夫だった。年は陽露華と変わらない。
「これはこれは暁夫様。どうかしましたか?」
公任がにこやかに尋ねると、暁夫はうんざりしたように一息吐く。
「夜会の時間はお伝えしたはずです。『どうした』ではありません」
「すみません。こういう賑やかな場所は久々で、つい浮かれていたみたいです。今から準備して参ります。……あ、銀邇と陽露華様もお呼びしましょうか?」
公任の言葉に銀邇と陽露華は同時に反応した。
暁夫はそこに本人がいるとは露知らず、皮肉を込めて言う。
「紅子姉様は『乱れ』た心地でいらっしゃいます」
「では2人には『みだりに』部屋から出ないよう言っておきましょう」
公任の返しに、暁夫は鼻で笑うと会場に戻っていった。
公任は扉を閉めて、眉を潜める。
「俺、何か間違えたこと言った?」
「紅子様は『乱れ』ているのです。どうやら私もあの方も思い悩んでいるようですね」
陽露華は答え、銀邇を見た。公任もつられて銀邇を見る。
見られた本人は首を傾げた。