第4章 人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほいける
解放される……!
3人の僅かな希望の光はすぐに終息した。
綺緋が食い下がったことによって。
「なんでよ! いいじゃない別に! 2人増えたところで問題はないでしょ! ほら早く門を開けなさい!」
使用人は明かに困惑していた。
雇われている以上、主人の言う事は聞かねばならないが、主人の安全確保も仕事の内だ。
公任は今すぐにでも綺緋の腕を振り解いて、銀邇と陽露華を連れて逃げる事は容易いが、万が一、綺緋に怪我を負わせるような事をしたら、この先何が起きるか。
「ちょっと聞いてるの!?」
「発言をお許しください!!」
綺緋と陽露華が同時に声を上げた。
公任、銀邇、使用人は驚いて陽露華を見た。
陽露華は綺緋が言葉を繋ぐ間も与えずに続ける。
「私達はある目的を持って旅をしているものです。つい先程、お母様と〈運命的な〉再会を果たし、今日がお婆様のお誕生日である事を思い出しました。しかし、私達に残された時間はごく僅か。一刻も早くこの旅に終止符を打たねばならないのですが、お母様の親身かつ粘り強い説得に折れ、私達はこうして参上致しました。心中お察しします。お母様の努力が水泡に帰すとしても、貴女には貴女の全うしなくてはならない任務があります。故に無理強いは致しません。しかしながら、先程申し上げた通り、私達は旅のものである為に、後日改めて訪問する事は叶いません。貴女に全ての判断をお任せします」
陽露華が話す間も口を挟もうとしていた綺緋が遂に爆発した。
「最終決定権は私にあるのよ! アンタみたいな奴隷未満の身分の人間が、何偉そうな口聞いてんのよ! 誰の使用人に指図してると思ってるの!?」
「失礼ですがお母様」