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黄金の草原

第2章 世の中にさらぬ別れのなくもがな千代もと嘆く人の子のため



事の始まりは明らかにされてないけど、唯一言える事は、正体不明の単葉植物が同封された、1冊の本が発見された事から初まる。

その植物は、現在確認されている種類の植物とは似ているようで異なっている。いろんな研究者がいくら調べても全く分からず、それどころか栽培も不可能だ。

根が無いからな。

研究は停滞し、研究者たちはさじを投げた。その直後だった。本の数が少しずつ増えていったのは。

そして本の内容が同じものは一つもない。
唯一、同じと言えるのは最後の行であるこの文。


『この物語は全て事実である。登場した人物、組織、場所等は全て現実と大いに関係がある』


いつしか国中に出回った『それ』の読者は、大きく分けて4つに分かれた。

1つ。
旅籠の放火犯のように、物語の結末及び最後の文章に踊らされて黄金の草原を探し、結局見つけるどころか、多くのものを失って、失望した者。この人たちの事を『失望者』と呼ぶ。
彼らは『本』を恨み、憎み、手当たり次第に消そうとし、消せるのならば手段を選ばない。人格を失った者さえいる。

2つ。
『本』に踊らされなかった者。『踏まず人』とも言われる。陽露華ちゃんはこれ。
ただ、この人たちは『失望者』によって殺される確率が非常に高い。その辺の原因はまだよく分かっていないんだ。

3つ。
『探し人』と言われる、黄金の草原を探している旅人だ。俺と銀ちゃんがそれ。
『探し人』から『失望者』になる奴が殆どだが、忍耐の強さがモノを言う。『失望者』になった奴は言わば、初志貫徹できない弱気者だ。

4つ。
こいつらが1番厄介で、『失望者』の手助けをする奴らだ。しかも趣味でな。『失望者』の手綱を引くことから『手綱人(たづなびと)』とも言われている。葵ちゃんを斬ったあの医者がそれだ。
『失望者』に『本』の在り処を教え、混乱に乗じて犯罪を犯す。

でもな、『踏まず人』が完全に不利なわけじゃない。
仏は平等なんだよ。

『踏まず人』は自分自身及び周囲の人間が気付かないうちに、特殊能力を持つと言われている。『失望者』に襲われた者限定でな。

『踏まず人』は襲撃後の初夜で悪夢を見る。その中に、取得する能力を示唆する何かがあると言われているが、生憎、俺も銀邇も『探し人』だから詳しいことはわからない。


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