第12章 まづまづしばらく日和を見るつもりだ
街へ下りた公任、銀邇、陽露華は宿を探す。
この街は主に観光地として栄えているので、宿は多い。そして人も多い。
流石に公任に3人分の旅荷物を持たせて街歩きするのは酷と言うもの。銀邇は陽露華を下ろし、公任から荷物を受け取る。
陽露華は地面に足をつけた途端、膝に力が入らず尻餅をついた。
「やっぱりまだ歩けないか。支えがあれば歩けそう?」
「はい。すみません」
「いいのいいの。俺が力使っちゃった所為だからね」
公任は陽露華の手を引く。銀邇が陽露華の旅荷物も背負った。
とりあえず安そうな宿で2部屋取った。陽露華が1人部屋、公任と銀邇が相部屋だ。
3人は必要最低限の持ち物で街に出る。
公任は陽露華と手を繋いで歩き、陽露華の横に銀邇が並ぶ。
もうすぐ昼時だ。
陽露華は朝餉からずっと寝ていたのであまりお腹は空いていなかったが、食べれる時に食べておかなければ旅はできない。
街のあちこちから炊き出しの匂いがして、自然と腹が減る。
3人は近場の屋台で焼き鳥の串を数本買って食べた。
タレがよく絡んでいて、鶏肉も柔らかく、口の中でほろほろとほぐれた。
花街でもいい店を選べば、美味いものにありつける。
屋台は屋台でも、気をつけなければならない事はたくさんある。
「あ」
公任が目を向けた先にある屋台。そこでは魚の蒲焼が売られているが、随分細かく切られている。
「あれ、蛇だね」
公任が小さく呟いた。この声は陽露華と銀邇にしか聞こえていない。
蛇を魚と偽って売るのはよくある話だ。陽露華の故郷の花街の屋台でも見かけた。本物の魚より小骨が多くて食べにくい為、案外すぐに気付くが、意外とバレない場合もある。
「もしかしたら、これも鶏肉じゃないかもね」
公任は陽露華を見下ろして、串を咥えたまま人の悪い笑みを浮かべた。
陽露華の喉がヒュッと言う。
銀邇は半白眼で公任を睨んでいた。
食べ終わった3人は、串を近くのゴミ捨て場に捨て、水路沿いに街を歩く。