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黄金の草原

第11章 この日や天晴れて、千里に雲の立ち居もなく



陽露華は急いで起き上がってその木の下に行くが、Uの影も形もなかった。


「いた」


陽露華が振り返ると、肩で息をする銀邇と目が合った。


「急に居なくなるから心配したぞ」
「すみません、焚火用の枝を拾ってまして」


銀邇は陽露華の目の前まで来て、顔を覗き込む。陽露華はびくりと体を震わせたが、黙って見つめ返した。


「さっきの音は?」
「動物にびっくりして、思わず。あ、何も傷つけてないです」
「何もなかったか?」
「はい、何もなかったです」
「本当に?」
「はい」


暫く見つめ合って、銀邇が顔を離した。
陽露華は内心ほっとしながら集めておいた枝の束を拾って、銀邇と天幕へ戻る。

2人で焚火をしていると公任が戻ってきた。立派な川魚をたくさん刺した枝を10本くらい持っていた。


「すごいでしょー?」


公任が自慢げに魚を見せる姿は無邪気な子供そのもの。
陽露華も銀邇も、思わず頬が緩んだ。

昼餉は腸を取った魚をそのまま焼いて食べた。
外はパリパリ、中はふわふわで、陽露華が枝拾いの途中で見つけた香草と合わせて、川魚特有の生臭さを消して美味しくいただいた。
公任は終始、陽露華の料理の腕を褒めちぎり、銀邇もよく褒めてくれた。

夕餉は残った魚を鍋にするべく、昼餉が済んですぐに、山菜を採りに公任が出立した。
その間に銀邇は魚を捌いて、食べやすいように細かく刻む。
陽露華は今夜の催し物のために準備を始めた。

公任が山菜採りから戻ってきたのは、夕食の準備に取り掛かっても良いぐらいの時間だった。

山菜を刻み、魚に味をつけ、食材を鍋に並べ入れ、濾過した水を入れて、火を掛ける。

じっくり煮込むこと数分。
公任が木蓋を開けると、


「わあ」
「おお」
「美味しそ〜」


陽露華、銀邇、公任も思わず声をあげる。芳醇な山菜と爽やかな白身魚がぐつぐつと煮えていた。


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